私たちが着物を着る時、
帯は背中で結びますね。
時代劇を見ても、
帯の結びかたは違っても
武家の奥様や町娘は
背中で帯を結んでいます。
ところが、花魁は、大ききな帯を前に結んで
華やかな姿で登場しますね。
どうして、花魁だけが前に帯を結ぶのでしょうか?
花魁以外にも、帯を前に結ぶ場合は
あるのでしょうか?
着物の前で帯を結ぶのは花魁だけじゃないって本当?
出典:http://blog.goo.ne.jp/tomtom_1954
歌舞伎で、登場人物の衣装をよく見ていると
帯を前で結んだ女性が、時々出てきます。
仮名手本忠臣蔵 六段目「勘平切腹」の場面。
人気の演目ですので、ご覧になった方も多いのでは?
この段の主人公早野勘平の妻おかるの母親は、
田舎暮らしの老女という設定。
その母親は、帯のお太鼓部分を前に垂らして
結んでいます。
江戸時代は、花魁以外にも、
帯を前に結ぶことがあったのですね。
前結びの帯の本当の意味とは?
そもそも、桃山時代くらいまで、
帯は紐のようなもの、あるいは、
帯状でも幅の細いものでした。
現代のベルトのイメージですね。
そのため、帯結びに凝る必要がなく
着物を縛って止めるためだけに
気軽に身体の前で結んでいたようです。
江戸時代に入ると、
帯は、着物コーディネーションの
重要なパーツの一つになりました。
帯の幅はどんどん太くなり、
そこには、綺麗な柄が織りだされました。
さて、太い帯を前で結んだ姿を想像してみてください。
丁度、リュックサックを前に背負うような感じです。
身体の前に大きな飾りがついていれば
ご飯を食べるにも、何をするにも、
手の動きが制限されることになります。
つまり、帯の幅が広くなるのに伴い、
体の動きが制限されないように、
帯の結ぶ位置は後ろに変化して行ったのです。
一方、花魁は、動きが多少、不自由になっても
太い帯を前で結んでいました。
それには、様々な意味が考えられています。
豪華な帯は、前結びの方が見た目が
映えるということもあるでしょう。
また、花魁という職業柄、
「帯を解きやすく」という演出も
重視されたでしょう。
京都・島原の太夫も、
帯を大きく前に結んでいました。
その、結び方は独特で、
『心』という字を表していると言われます。
「心はしっかり結んで、簡単には乱れない」
という花魁ならではの誇りが
帯の結び方に込められているのです。
出典:http://www.el-saito.co.jp/cafe/cafe.cgi
因みに、先ほど紹介した歌舞伎の老婆の
前結びは、どういう意味なのでしょうか。
それは、手が背中に回らないので
やむなく、前で結んでいる・・
という姿で、年老いた女性を表現しています。
確かに、年齢を重ねていくと
だんだん腕が背中に回らなくなり、
帯結びが辛くなってきますものね・・。
帯を前で結びたく気持ちは、よくわかります。
現代で着物の前で帯を結ぶことはある?
帯を前に結ぶスタイルは
今では見ることはありません。
前にも述べたように、
太い帯をしっかり前で締めると
手が自由に動かせず、
日常生活に支障が出てしまうので
帯を前で結ぶことはなくなってしまいました。
さらに、
前結びの帯=花魁
というイメージも定着しているので
このイメージに挑んで、
帯を前に結ぶ方はいないのではないでしょうか?
唯一、帯を前に締める機会。
それは、旅館の浴衣の帯です。
背中に結び目があると
そのまま寝られませんから、
みなさん、自然と前で結びますよね。
浴衣以外での、帯の前結びは、
今は見かけないと思いますよ。