茶会に招かれ、露地を進み清らかな水の張った蹲踞に向かうと、
「いよいよ」と客の気分も引き締まるものです。
しかし、蹲踞の扱い方の稽古をする機会は限られているので、
茶室に入る前から蹲踞の前でオロオロしてしまうこともあります。
そうすると、出鼻からくじかれた気持ちになり、1日すっきりしないもの。
蹲いの扱い方は決して難しくありません。
一気に覚えてしまいましょう!
そもそも、蹲踞(つくばい)とは?
蹲踞の名前の由来は、手水で手を洗うときにしゃがむ、
蹲うことによるものです。
蹲踞は茶室に入る前に、客が屈んで手を清めるために置かれた
背の低い水の入った鉢のことです。
茶室の露地の蹲踞は、通常、水の入った「手水鉢」と3つの石、
そして排水部分で構成されています。
「前石」は、鉢の手前で水を使うときに足を乗せる部分。
「手燭石」は、鉢の左側、夜間には行灯を置く場所。
「湯桶石」は、鉢の右側、冬季に湯桶を置く石です。
なお、手燭石と湯桶石の左右は、茶道の流派によって異なります。
そして、それらの石に囲まれた、砂利を敷き詰めた部分を「海」と呼び、
ここに水をこぼします。
手と口を清める
亭主より案内があれば、客は腰掛けから立ち上がり、蹲踞に進みます。
前石の上でしゃがみ、右手で柄杓をとり、柄杓に半分ほど水を組みます。
まず、その半分の水を左手の平にその水を受け、清めます。
続いて、柄杓を左手に持ちかえて、残りの水を右手にかけて清めます。
手を清めたら、次は口を清めます。
右手に持ち替え、柄杓に半分ほど水を組みます。
少量の水を左手に受け、その水を口に含んで、すすぎます。
柄杓の柄を構えるように両手でもち、柄に沿わせて残りの水を流して、
柄杓を清めます。
柄杓を初めにおいてあった通りに、手水鉢の上に引いておきます。
湯桶が置いてある場合
寒い時期は、湯桶が湯桶石の上に置いてあります。
手を清めるときは手水鉢の水で、口を清めるときだけ、湯を使います。
湯桶のふたは、正客が開き、詰めが閉じましょう。
柄杓の置き方
手水鉢への柄杓の置き方は流派によって異なるようです。
表千家では、柄杓は、手水鉢の上に、柄杓の合を左に向けて、
斜めかけに置きます。
他の流派のお茶会では柄杓の置く向きが異なっているかもしれません。
その場合は、自分の流派のやり方にこだわるより、「元の通り」に置く方がよいでしょう。
蹲踞を使う際の注意点
手を清めた後は、手ぬぐいやハンカチで拭くことになります。
袂や懐に準備しておき、蹲踞の前にしゃがんだタイミングで、
膝の上に置いておくとよいでしょう。
ハンカチを探してもたもたすると、順番が後ろの人に迷惑がかかりますし、
何より、せっかくの着物が濡れてしまっては台無しです。
また、水を使う場合に、勢いよく柄杓からこぼすと、
水が周りにはねて、思わず着物を汚してしまうことがあります。
お茶碗にお湯を注ぐときと同様、「しずしず」と水をこぼして、
清めるとよいでしょう。
客が水をこぼさなくとも、蹲踞の周囲は、亭主によって水が打たれています。
前石にしゃがむ際にも、着物の裾が汚れないように注意を払いましょう。
口を清める際、水を手にうけず、柄杓に直接口をつけようとする方がいますが、
これは、絶対にしないでください。
「清潔」にする為に蹲踞を使うわけですから、次の方のことを考えれば、
やってはいけないこと・・というのはわかりますよね。
神社の手水鉢で清める際にも、柄杓に口をつけるのは避けましょうね。
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