「ぴんとこな」ときいて、
歌舞伎の役柄ね!
とくる人は、相当の歌舞伎通。
実際は、漫画のタイトルでしょ?
という方が圧倒的に多そうですね。
ネットで検索しても、歌舞伎の世界を舞台にした
漫画のタイトルという意味の方が
上位に表示されますし・・。
さて、本来の、「ぴんとこな」の意味は
どういうものなのでしょう?
歌舞伎用語の「ぴんとこな」ってどんな意味?
ぴんとこなとは、和事の役柄の一つ。
一見、女性的で優しそうな
ほんわかとした色気を持ちながら
きりりとした強さを持った役をさします。
男性らしく、見るからにたくましい荒事の役とも違い、
また、和事独特の、やわらかな、ぼんぼんとも違う。
やわらかさの中に、芯のある役柄です。
ぴんとこな代表と言えば、どの演目のどの役?
ぴんとこなの代表的な役といえば、
『伊勢音頭恋寝刃』の福岡貢。
福岡貢は和事の二枚目の色男。
元は武士、今は、伊勢神宮の御師
という役どころです。
御師とは、神宮の下級神官ですが、
お参りにくる旅人の世話などをする仕事です。
貢は、仕えていた家の若殿さまのピンチを救うべく
失ってしまった刀の行方を探しているという
設定です。
貢は、武士ではありませんので、
柔らかな雰囲気を醸し出しつつ
ふとした瞬間には、厳しい表情を見せて
「ぴんとこな」で演じられます。
ストーリーもご紹介しましょう。
刀を手に入れた貢が、若殿に渡そうと
遊郭で待ち合わせをするのですが、
待っている間に、敵方についている仲居には
徹底的にいじめられて恥をかかされ、
さらに恋人の花魁からは愛想をつかされて、
とうとう、貢はキレてしまいます。
そして、刀の怪しい力も加わって、
大勢の人に切りかかってしまうのです。
優しそうな美男子の貢が、だんだんと青ざめ、
最後は血まみれの恐ろしい形相に
変わっていくところが
見どころです。
どちらも色男?「つっころばし」とはどう違うの?
やはり、上方の男役の役柄を表すつっころばし。
こちらの方がよく耳にするかもしれません。
『廓文章』の伊左衛門
『双蝶々曲輪日記』の与五郎
などがつっころばしの役です。
つっころばしとは、文字通り、
肩をついただけで転びそうな
男性のこと。
豪商の若旦那や若殿様で
浮世離れした存在です。
イケメンではあっても、甲斐性なし、根性なし。
そして、恋に狂い、成就させるために、
周囲を巻き込んで大騒動が起こる・・
という役柄です。
確かに、たいがい、超売れっ子花魁と
恋愛をしているので
モテモテの色男ということになるのでしょうが、
でれでれとしていて、喜劇的な役です。
今も、関西では「笑いがとれない男はもてない」
なんていわれますが、
昔の上方は、
ああいう滑稽な男性が人気があったのでしょうか?
私は、つっころばしより、ぴんとこなの方が
好みですが・・。
知っているとより楽しめる歌舞伎用語は他にもある?
他にも歌舞伎ならではの用語はたくさんあります。
赤っ面は、文字通り赤く顔を塗った役で、
下っ端の悪人。
実悪は、大悪人のこと。
イケメンだけど悪人なのは色悪。
国崩しとは、国家を崩壊させかねない、
スケールの大きな悪人のことです。
女形にも呼び名があります。
赤姫は、とても高貴なお姫様。
赤い着物に、大きなかんざしをつけて登場します。
悪婆は、妖艶な姉御肌で、
悪事も平気ではたらく女性。
武家の高貴な女性は、
その髪型より片外しと呼ばれます。
歌舞伎の登場人物はパターン化されているので、
こういう言葉を覚えておけば、
ストーリーを理解する上でも
役にたちますよ!
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