「鈴ヶ森」は四世鶴屋南北の「浮世柄比翼稲妻稲妻」の
一場面が独立したもので、
1823年に、初演されています。
特段のストーリーがあるわけではないのですが
若々しい美少年が、暗闇で襲いかかる浮浪者たちを
バッサ、バッサと切り捨て、
その姿を見た江戸一番の狭客が
カゴを止めて声をかけるシーンが印象深い演目です。
あらすじ
東海道の宿場町である品川宿に程近い鈴ヶ森は、
刑場としても有名な場所で、
薄気味悪い雰囲気が漂っています。
そこには、夜になると強盗と化す雲助(浮浪者)が
多数出没しています。
鈴ヶ森を通りかかった飛脚は雲助に着ぐるみ剥がされ、
さらには
「因州鳥取の白井権八というものを討ったものには
褒美として大金を支払う」
という内容の手紙を取り上げられてしまいます。
丁度そこに通りかかるのが、その白井権八。
父を侮辱した同じ家中の本庄助太夫 を討って、
江戸へ逃げてきたのです。
まだ若々しい美少年ですが、
褒美ほしさに襲いかかる雲助たちを、
顔色ひとつ変えずバッバッタと切り捨てます。
そこに駕籠が通りかかり、道端で止ります。
権八が雲助を一通り倒し、立ち去ろうとするところで
駕籠から声がかかります。
呼び止めたのは町奴の頭領、幡随院長兵衛。
権八の腕に見惚れ、匿うことを申し出て、
江戸での再会を約束して別れるのでした。
見どころ
「鈴ヶ森」は人気があるので、頻繁に上演される演目です。
権八も様々な役者が演じますが、
どんな年齢の方でも美少年に見せるところは、
さすが歌舞伎役者!と感じさせます。
また、権八が雲助を倒すシーンは、
顔や足が切られる様子を小道具を使って、
ユーモラスに表現しており、
残忍なシーンのはずなのに、
思わず笑いがこぼれてしまいます。
どんな仕掛けかは、見てのお楽しみということで!
そして、終盤。
「お若いの。おまちなせぇ」
声をかける幡随院長兵衛は、いかにも江戸の親分の風情で
格好いいのです!
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