「紅葉狩」は、竹本・長唄・常磐津の3つの音曲によって、
伴奏される舞踊です。
平維茂による信州の戸隠山の鬼女退治を描いた能の作品を
河竹黙阿弥が歌舞伎舞踊に書き換え、
名優の誉れ高い9代目の市川團十郎が自ら振り付けをして、
明治20年に初演されました。
当時の團十郎は史実に基づいて演出する「活歴」に
力を入れていたので、維茂の烏帽子や狩衣も
史実に基づいた扮装だったということです。
あらすじ
紅葉が美しく色づいた戸隠山に平維茂が
従者の右源太、左源太とともに
紅葉狩にやって来ました。
すると、そこでは、身分の高い女性が
侍女たちとお忍びで訪れており、
宴を開いている様子です。
姫が是非ご一緒にいかがと誘うので、
維茂は宴に加わることにしました。
酒・肴のもてなしに、盃を重ねる維茂。
腰元は舞を舞い、右源太、左源太も
楽しい踊りを披露します。
維茂は、姫にも舞を所望しました。
姫は恥ずかしがりながらも、舞い始め、
やがて二枚の扇を使った華やかな舞いを披露します。
そのうち、酔いしれた維茂はうたた寝をしてしまいます。
姫は何度か様子を窺い、維茂が熟睡していると確認すると
表情を一転させて、従者と山へ姿を消すのでした。
姫と入れ替わりに山の神が現れます。
「この山奥には人を取って喰う鬼がいるのに、
こんなところで寝ていて危ない」
と山の神は杖で突いたり、肩をゆすったり、
維茂らを起こそうとしますが、
一向に目覚める気配がなく、
あきれ返って帰ってしまいました。
夜風にようやく目覚めた維茂は、
姫の正体を見届けようと山奥へ向かいます。
やがて維茂に追われて出てきたのは、
形相凄まじい鬼女でした。
勇敢な維茂も押されてしまいますが、
平家に伝わる名剣小烏丸の力を借り、
鬼神を追い詰めていくのでした。
見どころ
前半の見どころは、お姫様が
二枚の扇を使って優雅に可憐に舞うところ。
後半では、その華やかお姫様が、一転して
とても恐ろしい形相の鬼に変わって再登場して、
維茂に襲いかかるところが見どころです。
姫も鬼も同じ人物が演じるわけですが、
その対比が面白いところです。
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