「外郎売」の長セリフといえば、
俳優の養成所、アナウンサーの研修等で
発生や滑舌の練習に使われることで有名です。
とにかく早口言葉が山盛りのセリフを、
何度も読んで練習するのですが、
これがとっても大変。
口が筋肉痛になりそうなほどなんです。
さて、どんなセリフなのでしょうか?
歌舞伎の外郎売り!長せりふが超難しいってホント!?
歌舞伎には様々な演目がありますが、
これだけの長いセリフを一気に言うのは
外郎売だけではないでしょうか。
さて、時は、2010年の京都南座。
公演の初日直前に、外郎売を務めるはずの海老蔵が
ケンカ沙汰で顔を負傷して
舞台に立てなくなるという事件が発生。
あの長くて難しいセリフのある役、
ピンチヒッターを誰が務めるのか
注目を集めました。
代役を務めたのは、片岡愛之助。
3日前に代役が決定して、
それから長いセリフを覚えたとのこと。
無事に初日が終わった時には、
大きな拍手が起こりました。
愛之助も「無理です」と最初は断ったそうですが、
他に代役を果たせる人もなく、
ほとんど押し切られる形で引き受けたとか。
この代役を務めたことで、
彼は一気にスター街道を歩み始めました。
滑舌練習にも使われるほど!どんなセリフなの?
さて、実際にはどんなセリフなのでしょうか?
本当に長いセリフなので、
その一部をご紹介しましょう。
まず、出だしは、
拙者親方と申すは、お立ち会いの中に、
御存知のお方も御座りましょうが、
御江戸を発って二十里上方、
相州小田原一色町をお過ぎなされて、
青物町を登りへおいでなさるれば、
欄干橋虎屋藤衛門、
只今は剃髪致して、円斎となのりまする。
元朝より大晦日まで、
お手に入れまする此の薬は、
昔ちんの国の唐人、
外郎という人、我が朝へ来たり、
帝へ参内の折から、
この薬を深く籠め置き、用ゆる時は一粒ずつ、
冠のすき間より取り出す。
依ってその名を帝より、
とうちんこうと賜る。
即ち文字には、
「頂き、透く、香い」と書いて
「とうちんこう」と申す。
ここまでで20%くらいでしょうか?
さて、後半は、早口言葉の連発です。
来るは来るは何が来る、
高野の山のおこけら小僧。
狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。
武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、
合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ。
菊、栗、きく、くり、三菊栗、
合わせて菊栗六菊栗、
麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、
合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ。
あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。
向こうの胡麻がらは、えのごまがらか、
あれこそほんの真胡麻殻。
がらぴい、がらぴい風車、
おきゃがれこぼし、おきゃがれ小坊師、
ゆんべもこぼして又こぼした。
たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、
ちりから、ちりから、つったっぽ、
たっぽたっぽの一丁だこ、
落ちたら煮て食お、
煮ても焼いても食われぬものは、
五徳、鉄きゅう、かな熊童子に、
石熊、石持、虎熊、虎きす、
中にも、東寺の羅生門には、
茨城童子がうで栗五合つかんでおむしゃる、
かの頼光のひざもと去らず。
・・・さて、まだまだ続くのですが、
この早口言葉、上手に言えますか?
外郎売りの長セリフを動画で見てみよう
さて、では、実際にこのセリフを読み上げると
どんな風になるのでしょうか?
12代目市川団十郎の外郎売を見てみましょう。
外郎売りってどんな演目なの?簡単なあらすじ!
外郎(ういろう)は、名古屋名物のお菓子でなくて
薬です。
今でも、小田原には、「外郎」家が続いていて、
薬を販売しているんですよ。
二代目の市川団十郎は、
その外郎を服用したところすっかり持病が回復。
感謝をこめて、薬の効用を披露する演目を
作ったのが「外郎売」です。
あらすじは単純。
曽我兄弟の敵討ちがベースになっています。
大磯の廓にきた御狩総奉行・工藤左衛門祐経。
工藤は、外郎売の芸を披露する芸人がいると聞き、
廓に呼び出します。
外郎売は、実は工藤に父を討たれた
曽我五郎が変装した姿。
早口に外郎売の口上を述べたてつつ、
敵討ちのチャンスを狙います。
しかし、
五郎は、「兄とともに仇討ちをすべき」と
たしなめられてしまいます。
工藤は
「巻狩の総奉行を務めあげたら、
仇討ちに応じよう」
と約束し、
五郎に狩場の絵図面を投げ与えるのでした。
このお芝居の見どころは、前述したとおり
五郎が扮した外郎売が捲したてるセリフですね。
次に、いつ上演されるかわかりませんが、
機会があれば逃さずに観劇して
この早口言葉を楽しんでくださいね。
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